退職すると、健康保険や年金、税金などを自分で手続きしなければならなくなります。
YouTubeを見ると「退職後は任意継続がお得」「傷病手当金をもらえばいい」といった動画も多く出てきます。
しかし、実際には人によって条件がかなり違います。
今回は、自分が退職時に調べた健康保険と、YouTubeでよく紹介されている傷病手当金について書いてみます。
任意継続と国民健康保険
退職後の健康保険では、それまでの健康保険を任意継続するか、国民健康保険に加入するかを選ぶ人が多いと思います。
YouTubeでは「任意継続には保険料の上限があるので、給与が高かった人ほど得」と説明されることがあります。
協会けんぽについては、これは概ね正しいです。2026年度の上限は標準報酬月額32万円で、退職時の給与がそれ以上でも32万円を基準に計算されます。ただし、この金額は毎年度見直されるものです。
しかし、すべての健康保険がそうではありません。
自分が会社員時代に加入していたのは、協会けんぽではなく関東ITソフトウェア健康保険組合でした。
関東IT健保にも以前は上限がありましたが、2023年4月以降に任意継続となった人については、この上限をやめ、退職時の標準報酬月額をそのまま使って保険料を計算するようになりました。給与が高かった人ほど、保険料も高くなるということです。
関東IT健保だけではありません。
埼玉県建設業健康保険組合、三谷健康保険組合、azbilグループ健康保険組合なども、同じように上限を廃止しています。
2022年1月に施行された法改正により、健康保険組合は規約を変更すればこの方式を採用できるようになったためです。
ただし、いつから適用されるのか、すでに任意継続中の人まで対象になるのかは組合によって違います。ここは自分の組合に確認するしかありません。
したがって、「任意継続には上限があるから得」と一律に考えるのは危険です。
自分が加入している健康保険の任意継続保険料と、居住地の国民健康保険料を実際に比較する必要があります。
自分の場合は比較した結果、国民健康保険の方が安くなりました。
人によって結論が変わる要素
ただし、扶養家族がいる場合は事情が変わります。
会社の健康保険では、条件を満たす家族を被扶養者にしても、その家族について別途保険料を支払う必要はありません。
一方、国民健康保険には「扶養」という制度がありません。家族もそれぞれ国民健康保険の加入者となるため、加入人数が増えれば保険料も増えるのが基本です。
そのため、本人一人なら国民健康保険の方が安くても、扶養家族がいる家庭では任意継続の方が安くなることがあります。
また、倒産や解雇などの会社都合で離職した場合には、国民健康保険料の軽減制度があります。
これが使えるかどうかで結論が変わることもあるので、自己都合退職でない人は市区町村の窓口で確認してください。
もう一つ、1年目と2年目で有利な方が入れ替わるケースもあります。
任意継続の保険料は原則として2年間変わりませんが、国民健康保険料は前年の所得で決まるため、退職の翌年度は高く、その次の年度で大きく下がります。
1年目は任意継続、2年目は国民健康保険という選び方もできるわけです。
2022年1月からは本人の申し出で任意継続をやめられるようになったので、この切り替えは以前より簡単になりました。
結局のところ、任意継続と国保のどちらが得かは人による、というのが答えです。
YouTubeの一般論を鵜呑みにせず、健康保険組合と市区町村の窓口の両方で、自分の場合の金額を計算してもらうのが一番確実です。
傷病手当金について
もう一つ、退職関係のYouTubeでよく出てくるのが傷病手当金です。
中には、「眠れないと医師に言えば診断書を書いてもらえる」「うつ病や適応障害の診断をもらえば傷病手当金を受給できる」というような説明をしている動画もあります。
これはかなり問題のある説明です。
傷病手当金は、診断名が付けば自動的にもらえる制度ではありません。
重要なのは、病気やケガの療養のために仕事ができない状態(労務不能)であることです。
したがって、「最近よく眠れません」という程度の話だけで傷病手当金を受給できるわけではありません。
逆に、本当に重い睡眠障害によって仕事ができない状態なら対象になる可能性はあります。
また、うつ病や適応障害という診断名があっても、それだけで受給が決まるわけではありません。
要するに、病名ではなく「その病気のために仕事ができないのか」が重要です。
不正受給のリスク
実際には仕事ができる状態なのに、虚偽の申告などによって傷病手当金を受給すれば、不正受給になる可能性があります。
健康保険法では、「偽りその他不正の行為」によって保険給付を受けた場合、保険者は給付額の全部または一部を徴収できると定めています。
それだけではありません。不正の行為があった場合、6か月以内の期間を定めて傷病手当金を支給しないという給付制限もあります。
さらに悪質なケースであれば、刑法の詐欺罪に問われる可能性もあります。
「診断書さえあれば大丈夫」というものではありません。
さらに自分が特に危ないと思うのが、「傷病手当金を受給しやすい医師を紹介します」といったサービスです。
YouTubeなどから相談サービスに誘導し、数万円からそれ以上の料金を取るものもあります。
こうしたサービスの中には、単に医療機関を紹介しているだけではなく、傷病手当金の受給を前提として業者と医師が連携し、一つのスキームとして運営されている可能性まで考えた方がいいと自分は思います。
もちろん、個々のサービスが実際に不正を行っているかどうかは外部からは分かりません。
しかし、本来は病気になり、その結果として仕事ができなくなった人を支えるのが傷病手当金です。
最初から傷病手当金を受給することを目的に、「診断書を書いてくれる医師を探す」「受給しやすい医療機関を紹介してもらう」という順番になっているのであれば、それ自体かなり警戒すべきでしょう。
そして、もし不適切な申請と判断されて給付金の返還を求められたとしても、返還義務を負うのは受給した本人です。
健康保険法は、虚偽の報告をした事業主や、診断書に虚偽の記載をした医師については、本人と連帯して納付を命じることができると定めています。しかし、間に入って紹介料を取った業者は、そこに含まれていません。
つまり業者は受け取った金を持ったままで、返さなければならないのは利用者だけということになります。
結局、損をするのは利用者だけです。
自分はこういう話には乗らない方がいいと思います。
傷病手当金を「誰でも簡単にもらえるお金」のように紹介しているYouTuberについては、それだけで情報の信頼性を疑っていいと思っています。
中には登録者数100万人超えのYouTuberが傷病手当金を貰わないと損などと言っていて驚かされるのですが、特に動画の最後で医師や詳しいやり方を紹介するというLINEが載っている場合は、紹介サービスへの動線だったりするので、十分気を付けてください。

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