人気ドラマ「VIVANT」の第20話を見ました。
日本のドラマとしては破格の制作費を投じた大作で、海外での視聴も意識した作品だそうです。
しかし戦闘シーンには、大いに違和感を覚えました。
特にCQB(Close Quarters Battle:近接戦闘)の描写は、あまりにも不自然でした。
勿論ドラマは娯楽作品なので現実を忠実に再現する必要はありませんが、それにしても限度があると思います。
あり得ない戦闘シーンの描写
まず気になったのが、主人公が一人で先頭を歩き、その後ろを小銃を構えた部隊がついていくシーンです。
主人公は拳銃しか携行しておらず、しかも銃を構えずに歩いています。
一方で後方の隊員たちは前を歩く主人公に銃口を向けないよう、わざわざ射線を外しています。
これでは突然前方に敵が現れた場合、即座に射撃することが出来ません。
極めて近い距離で敵と遭遇する可能性のあるCQBでは、ほんの一瞬早く引き金を引けるかどうかが生死を分けることもあります。
しかも小銃を装備した隊員がいるにもかかわらず、拳銃しか持たない人間が先頭を歩いていることにも合理性がありません。
主人公が射撃の名手であることはこれまでにも何度も描かれていますが、射撃の腕前とCQBにおける部隊行動は別問題です。
それに余程特殊な状況でない限り、火力で劣る拳銃のみで敵施設に潜入することも考えられません。
主人公を目立たせるための演出なのでしょうが、あまりにも不自然でした。
不自然なのは主人公の動きだけではありません。
移動中は隊員同士の間隔が詰まりすぎて団子状態になっており、手榴弾1発や敵の連射1回でまとめて無力化されかねません。
また銃口の向きは一貫しておらず、後方の隊員の銃口が前の隊員の頭や背中に向いている場面もあります。
これでは味方を誤射しかねません。
更に後方を警戒する描写はたまにあるものの、大半の場面では全員が前方ばかりを見ていて、背後や頭上への警戒が疎かになっています。
まるでスター・ウォーズのような銃撃戦
その後の銃撃戦では、もっと決定的な違和感を覚えました。
それは銃弾の表現です。
発射された弾丸が光の線となって飛んでいき、まるで「スター・ウォーズ」のレーザー銃のようでした。
通常の銃弾は、飛翔する様子を光の線として見ることなど出来ません。
確かに弾丸の飛翔を視認出来るようにした曳光弾という弾薬は存在しますが、曳光弾であってもドラマで描かれたレーザー光線のような見え方はしません。
視聴者に弾道を分かりやすく伝えるための演出かもしれませんが、あまりにも現実離れしていて、むしろ安っぽく感じてしまいました。
これは自分だけの感想ではなく、同じ違和感を覚えた視聴者は多かったようです。
海外ドラマとの違い
その点、現在Netflixで視聴出来るアメリカのドラマ「SEAL Team」はかなり違います。
この作品もドラマである以上、作戦内容やストーリー展開には突っ込みたくなるところが少なくありません。
特にブラボー・チームは純粋なSEAL Teamではなく、実のところDEVGRUという即応部隊なのですが、それにしても派遣頻度が高すぎます。
ただし、CQBについてはかなり正確に描かれていると感じます。
この作品には、実際にデルタフォースやSEALsなどで活動していた元特殊部隊員が俳優として参加しているほか、多くの元隊員がエキストラやアドバイザーとして制作に関わっています。
そのため戦闘シーンには相応の説得力があります。
「VIVANT」も相当な制作費をかけているのなら、何故アドバイザー等の専門家を付けなかったのかと思います。
特に海外展開を考えているのであれば、なおさら疑問を感じます。
日本の刑事ドラマで良く見る問題
こうした問題は「VIVANT」に限りません。
日本の刑事ドラマでは、刑事が拳銃を構えて仲間と連携しながら犯人の潜む建物に突入するようなシーンをよく見かけます。
しかし一般の刑事は、SATやSITなどの専門部隊が行うような突入訓練を受けているわけではありません。
それにもかかわらず専門部隊さながらの身のこなしで突入する描写は、かなり無理があります。
また時々見かけるのが、犯人を警察官が取り囲んで四方から拳銃を向けるシーンです。
その状態で発砲すれば、外れた弾丸や犯人の身体を貫通した弾丸が、反対側にいる味方に命中する危険性があります。
現実では絶対にあり得ない状況だけに、味方同士が互いの射線に入りかねない状態で発砲する描写には、強い違和感を覚えます。
リアリティと娯楽性の両立
リアリティを追求しても、娯楽性が損なわれるわけではありません。
「SEAL Team」が示しているように、正確な部隊行動はそれ自体が緊張感を生み、登場人物がプロであることに説得力を与えます。
主人公を目立たせるための演出は、主人公が部隊の邪魔をしているようにしか見えません。
その上、小銃で武装した部隊として描かれている隊員たちまで基本を無視した動きをしていては、戦闘シーン全体の説得力が失われてしまいます。
また弾丸の演出に多くの視聴者が違和感を覚えたことからも分かるように、不自然な描写は専門知識のある人だけが気づくものではなく、作品全体の印象を左右してしまいます。
これは「VIVANT」だけでなく、日本のドラマ全般に言えることです。
娯楽性が重要なのは勿論ですが、演出があまりにも出鱈目だと、視聴者離れを招く可能性もあります。
海外での視聴を意識しているのであれば、なおさらだと思います。

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